新食魂島

王様は裸です、と叫びたい夜。

猫狩り族の長、レビュー:これは小説ではない

これは小説ではない、というタイトル、普段の私の麻枝准の評価

アニメレビュー:麻枝准が生み出した素晴らしい丸太3作 - 新食魂島

を見ると、またいつものようにクソミソに言うんですね、と思われるかもしれないが、半分正解で半分間違っている。

 

まずは間違いの方から。まあほめるとは言っていないんだけどね。

 

あらすじについては引用する。


海辺で出会った彼女は、美しく饒舌で世界で誰よりも――死にたかった。

猫が戯れるのを眺めていた女子大生・時椿は、断崖絶壁に立つ女性に声をかける。
飛び降りようとする黒髪の美女・十郎丸は、多くのヒット曲を手がける作曲家だった。
彼女は予想に反して、雄弁で自信に満ちた口調で死にたい理由を語ってのける。
人生で初めて出会った才能豊かな人間が、堂々と死のうとしている事実に混乱する時椿。
なんとかその日は十郎丸を翻意させ、下宿に連れて帰ることとなる。

なぜか猫に嫌われる死にたい天才作曲家と、何も持たない大学生。
分かりあえない二人の、分かりあえなくもあたたかい6日間が、始まった。

 

この作品に出てくる人物は、大学生の主人公(女の子)と年齢不詳の美人のお姉さん・・・いやこの二人の名前が時椿と十郎丸なのでいちいちタイプするのが面倒なのだが、この二人が作品の99%を占めていて、主人公の祖父と大学で出会ったちょっと気になる男の子が1%、あとはモブだ。

十郎丸は作曲家で自称作曲の基礎しかしらない、この世のすべてを退屈だと思う厭世的な人物、そのくせSNSを使用し自分を発信する人間だ。

そして作中の会話で音楽にやたら♭やらを入れたら歌にならないやらと言っている。

これは私の知る限り作者の作曲法そのものじゃないかと察し、

そこから

 

十郎丸=麻枝准そのもの

 

という結論をえた。言ってしまえばこの作品は作者の自叙伝と言え、そういった意味では小説ではない、と考えらえるのだ。

他の何かを理解できず、他の何かから理解されず苦しみ、レゾンデートルを求めるもそれすら疲れ果て、人の3倍とも思えるような時間の流れを感じ(断るが決してタイムトラベルだとかそういうものではなく感覚的なものである)、哲学的な問いを常に自分に課し続ける人間。

この作品を通して作者という人物がよく見えてくる。

私は嫌いだがね。

ちなみに数学者と哲学者はよく自殺で死んでいる。●●とは何かと問い続けるあまり、自分が生きる意味とは、というところにたどりつき、またその意思も強力なためだ。

 

もしあなたが作者のファンだというのなら、この作品は買いだと思う。彼の内面が赤裸々に語られているし、内容も彼らしいものだ。作者のことをもっと知りたい、という人には特におすすめできる。

面白いストーリーが読みたい、というのならまーったくオススメできない。彼のファンなら楽しめるだろうが。

 

さて、次は半分の正解、文字通り小説ではないという点について語ろう、すなわちいつものけちょんけちょんけなしだ。

 

プロローグを読む。・・・なんか変だ。本編を読み始めて数ページ、作者の大好きな無駄に高いテンションのリアクションがある、まあいつものだな。

そしてしばらくして気づく。

 

これギャルゲの台本だ。

 

想像で浮かんでくるのは、舞台のような動き連続性のあるものではなく、ギャルゲの背景、立ち絵が切り替わったりしてリアクションするものばかり。

主人公の「●●だったー!!!」というやかましいツッコミもギャルゲなら、と納得するものだった。

読み進めていくとその傾向は顕著だ。最初に●●な服装、といっただけでそれ以降の6日間、服装について触れたりする場面はない。

プロローグのシーンとクライマックスのシーンは別の場所だが崖っぷちなので、同じ背景が使われているそんな気さえする。

中盤くらいになるといよいよギャルゲ感が半端なく、地の文が消失する。

たまにある地の文はギャルゲの背景や立ち絵の説明程度のものだ。

草。

会話もひどく、ほとんどが作者の一人語り、早い話が愚痴である。

作者のファンでもなければ大体退屈だ。

地の文が薄いものの代表格に「化物語」がある。

あれは情景描写よりもキャラ同士の掛け合いを楽しむものだし、少なくともどんな場所、どんな雰囲気なのかは描写してくれる。

この作品における会話は、掛け合いというより問答に近く、そして問いに対しての答えはない。となるとどうなるかというと、一方通行の会話になるのだ。作者の分身たる十郎丸先生独演会だ。うーん微妙!

 

まあ別に、ギャルゲっぽいからダメというつもりはないんだけd・・・いやダメだなこれは。景色、セリフ以外から読み取れるしぐさ、感情、ああこれギャルゲなら勝手に絵が説明してくれるんだ、だから描写がないんだな。納得。

 

ギャルゲの台本であることを差し引いてもひどい。

セリフ以外から読み取れる情報がない、文体が主人公の一人称視点なのでその情報が全てだが、そこからもほとんど読み取れない。

このストーリーはガールミーツガールだが

一般的な流れでいけば

「出会う→相手を知る→変化がおきる」

となるところを

「出会う→相手を知る(正しくは知ったような感じになる)→特に何もおきない」

・・・クソか?

作者脚本のアニメ3作でも同じ流れだった。

キャラクターと出会うが、内面や行動、周囲になんの変化ももたらさず、結局お前何がしたいの状態に陥る。

十郎丸というキャラは非常に面倒くさい。

この小説もどきはこいつの駄々に延々と振り回されるだけのものだが

「十郎丸さんって●●なんだな」と思うこともなく「十郎丸さんの●●なところが魅力的だ」というのもない。ほめているのは外見だけだ。

私が気づいてないだけで主人公の内面には変化が起きているのかもしれない、ちゃんと見ればそういう描写があるのかもしれない、だが私はこれを見返したいとも思わない。

おっさんがこねているわがまま、駄々を見せつけられて喜ぶ趣味は私にはない。

 

最初に出てくる登場人物を挙げたが、その中の一人、主人公が大学で気になる男の子がいるのだが、彼の存在意義とはなんだったのだろう。

「神様になった日」で言うなら5話目のないイザナミサァンみたいなものだろうか。

おじいちゃんも、ほとんど存在意義がない。

このおじいは自殺の名所でその自殺志願者を引き留めることをしていて、たまたま主人公が代わりにやっていてそこに十郎丸がきた、というのがストーリーのプロローグだが・・・このプロローグ以降、クライマックス手前、作品の進行で言うと9割をすぎたあたりまで出てこない。

しかもその役割は、十郎丸の考えが有名な哲学者たち、プラトンやら荀子ソクラテスと同じであると教えるだけの役割である。

なんなんだこのおじいはwikipediaか。wikipediaでいいじゃんもう、いらねえよこのジジイ。

せめて途中でおじいに相談するとかして、へえー十郎丸さんってそういう考えだったんだーと気付かせるロールでも持たせればいいのに。

多分ラストでかっこよくキメたかったんだろうな、という作者の意図が見えて萎えます。そのせいでキャラの存在意義がなくなってんだよなぁ。というかこれもいつもの麻枝作品じゃん。

しかもその哲学者を挙げるシーンがこのクソ作品の中で一番面白い。なぜなら

なぜなら

なぜなら!

 

ミルクボーイのパクりだからです!!!!

 

・・・えーとクリエイターが他人のパクリでほめられるってどうなんですかね?

 

そして、このクソのタイトル、猫狩り族の長、というものだが・・・Angel Beats!みたいに何か深い意味があるんだろさすが麻枝先生だぜ!!とはならない。

残念ながらこれはcharlloteの方だった。特に意味はない。エピローグでチョロっと触れる程度だ。一応伏線っぽく猫の描写を詳しく描いているが、特に意味はない。

オチに関しても、まったくいいと思わない。そこは個人の感想でしかないのだが、そこに至るまでの描写があまりに稚拙で、クライマックスを迎えた時はようやく話が終わってくれるぜと思ったくらいだ。

山なしオチなし意味なし というわけではない、確かにオチも意味もなかったが山はあった。

優秀な作品が富士山を作るとしたら、これは高尾山といったところだが。

中盤までが終始しらけるのに山場が面白くなるはずがない。・・・やっぱりいつもの麻枝准じゃないかいい加減にしろ!!!

アニメ、特にクラナドまでの京都アニメーション産のkey作品が評価されたのは、9割以上アニメーション制作人の優秀さ故だと私は思っている。

別にP.A.Worksが劣った存在だと言うつもりはないが、比較したとき格が落ちるのも確かだ。それでもAB!はバカに売れた。

さてそういったアニメーションスタッフのない本書だが、そりゃもう「あこれいつものだ」と悟る程度の出来でしかなかった。

前々からこのゴミ作者の作品を褒め称えるやつはバカしかいない、と言ってきたがそんなひどい考えは心のどこかで否定したいところがあった。

どこか光るところがあるんだって少しでも信じてたい。

 

そう信じた俺がバカだった。こんなに味も匂いも、色彩も感じられないものに執着してるクソオタクはゴミだ。

もう今度からそう公言していくことにする。

 

<総評>私は麻枝准の信者はバカでどうしようもない人間だというが、もしあなたがそうであるというのならオススメします。

もしあなたが、そうでない人、麻枝ファンでない人にオススメしようとするのなら、その人が自分と似た人間であるかどうかを見極めてからにしましょう。まともな感性を持っている人に渡した場合、あなたの自尊心はズタズタに引き裂かれるでしょうから。

 

 

追記

shokutamalog.hateblo.jp