ファンサービス。
この言葉を聞いて人が抱くイメージは1通り。のはずがなぜか2通りある。
時は遊戯王ZEXAL、2011年にやつは現れた。
Ⅳ。
声が死ぬほどかっこいいこの男は、遊戯王に新たなミームを作りだした。
「なんで俺に気持ちよくデュエルさせねえんだ」とブチギレ
エースモンスターで相手のモンスターをミンチにするグロシーンを提供し
すさまじい顔芸とともに真のエースモンスターを繰り出してくる
一応彼の境遇は、極東エリアのエリアチャンピオンの側面もあるが一人異世界をさまよったことで全てが変わってしまった父親の復讐の手駒として主人公たちの前に現れ、父親の復讐の手駒を得るための手駒として切り捨てられ、それでもなお父親に認められたくて頑張る一人の少年、という側面もある
・・・ちなみに彼の真のエースモンスター、No,88 ギミックパペットデステニーレオ の名前には88(パパ)が入る皮肉である。文字通り操り人形(パペット)、道化としての扱いに涙がちょちょぎれそうだ。
なので一般的な扱いとしては悲しき悪役、となるはずなのだが。
彼の場合それまでのぶっとんだ顔芸、発言によりおもしれー男と扱われいているのが現状だ。
そしてそんな彼の口癖こそ「ファンサービス」なのである。
もちろん一般的な意味ではない。彼のいうファンサービスは
「一度希望を与えてからそれを奪い去る瞬間にする人間の最も美しい表情をさせてあげる」
ことであり、うんひどいなこれ。
私はそんな彼がなかなかに気に入ってしまい、彼の使用するギミックパペットデッキを組んでみたい。そう思った私は近くのおもちゃ屋のプレミアムパック15を買い、何枚かのカードを集めた。
・・・中にはいやらしいことにショートプリント、意図的に収録が制限されたカードもあったが、初めての通販シングル買いをしがっつりカードをそろえた。これが10年以上前のこと・・・え、マジで?
さて遊戯王には利用を制限するカードというものがある。
意味合いが広いので、限定すると、〇〇は強いから〇〇っていう弱いカードにだけ使えるようにしよう、とするカードのことだ。
具体的に説明するとこれだ。
このモンスターでいうと、2行目のギミックパペットモンスターのX召喚(カードを出すときの召喚法の一つ、X(エクシーズ)召喚では同じレベルのモンスターを重ねてその上にそのレベルにあったモンスターをもう一つの特別なデッキから出す召喚法である、このモンスターのレベルは8なのでもう1体、もしくはそれ以上を用意して重ねて召喚する、その時下に敷かれたカードをエクシーズ素材という)
にしか使えないという制約がある。要は、これ以外のに使えちゃうとちょっと強すぎるから縛っておこうね、ということである。
もちろんインフレした現代基準で考えるとこの縛りは全くいらないのだが・・・いや当時基準でもいらねえんだけどな?
ギミックパペットのXモンスターについて説明しておくと、1体を除きすべてランク8(2013年時点では3体、すべてランク8)、レベル8のモンスターを必要とする激重っぷりである。
まずは単体ではほぼ役立たず、打点が高いだけの雑魚ヘブンズストリングス
場のモンスターを破壊しそれがXモンスターならバーンダメージを発生させるが打点が雑魚いジャイアントキラー
そして先ほどのデステニーレオ
能力はこのカードを罠を使うことなく自分のほかのモンスターも自分も攻撃することなく、出してから3ターンの間1ターンに一個ずつ素材を使用して1つのカウンターをのせて3つカウンターが乗ったら勝利という、おせえよ!の極みの能力である。つまり使えないレベルで弱い。
アニメでは1ターン省略できるようになっている状況だったが、アニメにおいて特殊勝利は完全なる負けフラグなので、そのままサメの餌となっていった。
・・・以上だ!
要は出してもジャイアントキラーを除けば相手に何もしないカードしかない。
つまり遊戯王で大事な先行とっても弱い。
致命的だ。
こんなことを言っていることから察しが付くだろうがこのデッキ、弱い。マジで弱い。
自分が強いか弱いかでしかカードをみない人間なら絶対使用の選択肢に入らない弱さである。
それでも私はこのデッキをうまく使おうといろいろ工夫した。
この時代のギミックパペットで実用に耐えるのはマグネ・ドールというモンスターしかいなかったが、そちらにはX召喚先の縛りはなく、緩い条件を満たせば手札から特殊召喚という形で場に出せるというメリットがあった。
つまりこいつをいっぱい並べればほかの強力なランク8、No22,不乱健、No.62銀河眼の光子竜皇にアクセスでき、後者からはギャラクシーアイズFAフォトンドラゴンを経由し、禁止カードとなったギャラクシーアイズダークマタードラゴンを出すことができる。
もちろんネクロドール自体も有用なコマではあるので当然採用していた。
時代がうつると、闇属性ランク8Xモンスターを下に敷いて出せるペインゲイナー、そこを経由して出せるセブンシンズといったモンスターも増えたし、上記のXギミックパペットモンスターの進化体である、強力な能力をもったCNoの3体、並びにランクアップマジック(CNoを出すのに必要なカード)には大喜びした。
もちろんどこまで行っても先行はくそ弱いのだが、後攻のまくり性能は高いのでレベルが高い満足感、オールウェイズだしてくれるデッキだった。
当然新しいカードが追加されるたびに私は喜んでそれらをデッキに取り入れていき、デッキがよくなる快感に酔いしれた。
そうして4年ほど遊んだあたりでさすがにデッキそのものが時代が違います感がひしひしであり、リンクショックもありデッキを使用するのをやめた。
この時点で察しがついていると思うが
私はギミックパペットを使って戦うのが好きであって、ギミックパペットで戦うのが好きなわけではない。
限られた条件でそれを最大限にいかしてどう戦うか、それが私がカードゲームをやる意味なのだから、わざわざそのままでは満足に戦えないギミックパペットXモンスターだけに満足せず、どうすればデッキ全体で強く立ち回れるか、それを追い求めることこそがカードゲーマーとしての自分を定義しているといって過言ではない。
さて去年の4月ギミックパペットが強化されたとの一報を受けた私は、正直心が動かなかった。
ここ数年はMTGにお熱で遊戯王はほとんどかっていないし、マスターデュエルもそこまで熱を入れてやっていなかった。
なんとその強化では先行ワンキルができるようになったと知ったときは、えジャイアントキラーは先行だと無理だし、ヘブンズストリングス+ランクアップマジック+デビルスでもさすがに無理では・・・それともディザスターレオで?いや無理でしょ・・・としかならなかった。
なんとこのカード一枚からの始動でワンキルができるらしい。
・・・?
???????
インフレここに極まれりぃ・・・いやこのカードに書いてあることは全部おかしいのだがここまでやるの・・・
これが新規で一番でかい、今まで実はちょこちょこギミックパペット関連のカードは追加されてはいたのだが、それまで追加されなかった待望の4体目のランク8Xモンスターがこいつだ。
①の効果で先ほど説明したランクアップマジックを直接的にサーチできる効果(わぁ・・・)に召喚権の追加(うわぁ・・・)、なぜか相手フィールドに自分を出せる効果(先行でもジャイアントキラーの的になってくれる、ジャイアントキラーのバーンダメージを受けるのはなぜか相手)
②の効果を使用するためにこのカードを墓地に送る必要があるが、リンクモンスターのギミックパペット、キメラドールを出すコストにする、このカードをランクアップさせ、このカードのランクアップ体のファナティクスマキナの効果を使用するコストにすれば簡単に墓地に送ることができる。
・・・さてそれを聞いてももうはやリアルカードで遊ぶ気のなかった私の心は動くことはなかった。実はデッキを適当なカードと混ぜてしまいそれを探すのを億劫がったのも事実ではある
なのでマスターデュエルにこれらが実装されると早速私はそれまでのカードで一応作っておいたギミックパペットデッキに新しいカードたちを加えていった。
・・・気が付くと旧来のカードは9割くらいは抜けていただろうか。そして一応下調べしておいたデッキレシピのエクストラ(Xモンスターを置いておく特別なデッキ)のカードをそろえ、いざ実践!
・・・正直に言おう。つまらなかった。
ただのつまらなさではない、死ぬほどのつまらなさだった。
今の自分に希死概念がなくて本当に良かった。
目の前に拳銃がなくて本当に良かった。
なぜこうなったかは明白だ。
先行でやれることがワンキルしかないうえに後攻で別にやることが変わるわけでもないのが原因だ。
後攻で相手の盤面を潜り抜けてそれなりに展開できる状況ならなぐり倒すよりできることならバーンだけでワンキルしたほうがいいしその過程でデビルズの破壊効果で相手の場を空にできるので、先行とやることを変えなくても勝てる。
しかもいくつかルートがあるとはいえ、最終的な流れは一切変わらない。
それだけならいいのだが、そのルートは自分で開拓するものではなく、あらかじめこう回してくださいねーといわんばかりにデザインされたカードの効果に唯々諾々と従っていれば誰でも考え付くものなのだ。
さらに、拡張性もない。
最も強力な二枚
こいつらの縛りにギミックパペットモンスターしか特殊召喚できない(リンクモンスターのキメラドールは機械族Xしか召喚できない縛りを課す)とあるので、特に先行で出してお得なギミックパペットXモンスターなどいないせいで、先行で強く立ち振る舞うならワンキルするしかないのである。
悲しいことにこいつらの効果がマジで強い、いままでできなかった展開が本当に容易に行われてしまう。こいつらを採用しないでギミックパペットを回すのはハンデと言わざるとえなくなってしまう。
ワンキルしかさせてもらえない、しかもそうするようにデザインされた退屈なカードを使わないといけない、それが本当に私は嫌なのである。
ただ、今、これを書くにあたり少し落ち着いた目線で考えることができたせいか、ちゃんと答えにいきついた。
つまりはブラッディドールとキラーナイト、ギミックパペットしか召喚できないと書かれたインクの染みをもった連中のリストラを行った。
すっげえ快感だった。
あまったカードを砕いてUR素材にしてやった。
少しだけ溜飲は下がったが、それでもこんな悲しい強化ならなかったほうがよかった、これは俺が好きなギミックパペットじゃない。
間違いなくそう言える。
今、私はマスターデュエル上のギミックパペットを冷め切った眼で見ている。
最近の遊戯王のアドバンテージの概念の下品さには辟易していたが、そこにとどめを刺された気分だ・・・
こんなに苦しいなら愛さなければよかった、と世紀末覇王かV系バンドしかいわないセリフを締めに、本稿を終えたいと思う。
ただ、悲しい。