新食魂島

王様は裸です、と叫びたい夜。

カレー屋で超感動した話

私はメンタルをブレイクし、ニート生活を送っている身である。なのですねかじりだとか、親の金で食う飯はうまいか、と言われればひたすら平謝りするしかない。

まあ今回の話は味に関する話ではないのだが。

メンタルブレイカーの私は月に一度、松本にある信州大学の附属病院に通院している。そして所用をすませて帰宅しようとすると19:30を回っているので、親に土下座して外食の費用を出してもらい、食事をして帰宅する。

先日も所用をすませ、いざ何を食うかと迷っていた。

松本駅の駅前というのは食べる場所にはいささか困らせられるところで、居酒屋系のお店が非常に多い。車で通院をしている私には非常に悩ましく、さりとて諦めなければならぬのがつらい。

では居酒屋を除くとなると、どうにもチェーン店の類やファストフードとなってしまい、これまた除外したくなってしまう。30過ぎたおっさんが一人で入るにはいささかみじめだからだ。

かといってラーメン屋は御免だ。ラーメンなら家でも食べられる。家ではできない手間暇にお金を費やすにしてはラーメン屋は高すぎる。

 

・・・悩む。先日いった洋食屋も悪くはなかったが、会計際に「デザート頼んじゃったのぉおじちゃんww」(悪意を持った場合こうなる)と言われてしまったので、という理由もあるが、なんか気分じゃなかった。

そして、駅の真ん前の通りにカレー屋さんがあるのを思い出す。そうだ、ここにしようと井の頭五郎になったつもりで街を歩くのであった。

 

そうして店に入ると、日本人ではないおじさんが出迎えてくれた。インド人、と言いたいのだが、日本のカレー屋はネパール人が多いと聞くので、ネパール人、いやもしかして、などと考えるだけは無駄だ。重要じゃない。

店には私のほかに女性客が2人いたが、基本的には静かであった。このコロナのご時世営業も大変なのだろうな、と感じた。

さて何を食べようか・・・といっても私は大体この手の店で頼むものは決まっている。

当然、男は黙ってマトンカレーだ。ん?ナンにするに決まっているだろう。

実際のインドではナンは贅沢なようでチャパティのほうが食べられているらしい。

ナンを作るには大きなタンドールが必要で、そういった大きな設備を調えられないから、とはwikipediaの弁。

とはいえチャパティもたべてみたいのが・・・

 

両親へのお土産としてタンドリーチキンを頼んで待つ。

スマホをいじっていると、皿に盛りつけるような音が聞こえる。

スマホを置き、待っていると、私の目の前にナンとカレイなナンとカレーがサーブされた。

いただきます。

まずは肉からだ。何が野菜を先に食べるといいですよだ。知らん。男は黙って初手肉だ。

マトンを口に入れる。芳醇なスパイスな香りとしっかりとしたマトンの味が広がる。かみしめるとほろほろとマトンがほどけていくのを感じた。塊の繊維感を残しつつ、これだけ柔らかくできるのだろうか、ヨーグルトにつけてはいるのだろうがすごいなぁ、と東アジアの知恵に感動しながら食べ進める。

そして、水を飲み、テーブルに置く。

その時であった。

水のグラスが空っぽになったことを察知したおじちゃんが仕切りの反対側の私に水をもってきてくれたではないか。

カレー屋さんの人というのは本当にすぐ水をサーブしてくれるのだが、この時ばかりは本当にジャストタイミングだった。

正直に言おう。水を飲み終えテーブルに置こうとした瞬間、「これおじさん気づいたら面白いな」と思っていた。

そして本当に来てくれた。surprise!

 

・・・いったいそれがなんだと言われそうなので説明をしよう。

カクテルパーティー効果、といのをご存じだろうか。

決して向精神薬を混ぜ混ぜしてストゼロで飲んでうぇーいwwwではないことをご留意いただきたい。

これは、カクテルパーティのような、少しざわざわした状態でも会話をしている相手の話を聞き取れるよう脳が調整する、注意の指向性に関する話である。

ようするに必要な音を聞き分けて判別しているということだ。

 

私はこの話を「Bartender」で知っていた。

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この漫画は推せる。おこちゃまにはわかんねーかもなwww

とりあえず私から言えることは一つ、ドラマ版は許しません。ちなみにドラマの脚本はアニオタ知名度100%の高橋〇ツコである。そりゃそうなるわ。

 

これのエピソードで、Mr,perfectの異名を持つ葛原と主人公、佐々倉が、巨大ホテルの会長来島に勝負をたきつけられ、ちょうどかけつけたOL、美和に「マンハッタン」をお互いにだし勝負することになった話があるのだが、これがなんとも興味深い話である。(2巻の話)

簡単な筋を言うと、

佐々倉は急いでやってきた美和の身を考え、彼女が飲みやすいよう考慮したマンハッタンをだし、

対する葛原はいつも通りの王道のマンハッタンをだした。

美和は佐々倉の作ったのがおいしいと感じたが、佐々倉のその飲みやすさを考えたマンハッタンを葛原はカクテルと呼べないと断罪する。何かを察した佐々倉が葛原のマンハッタンを飲むと、その場で愕然とし、去ってしまう。

改めて美和が飲みなおすと、圧倒的に葛原の方がおいしく感じてしまう。結局佐々倉のカクテルはバランスを欠いていて、その行為は客に媚びを売っただけだったのだ。葛原はこれを若さゆえの失敗と思いつつも佐々倉をしっかりと評価していた。

 

という話だが。好き。

 

どのエピソードも面白いのでぜひ読んでほしいのだが、本筋に戻ろう。

この漫画の中で佐々倉がテーブルを見ずに「あそこのお客さん、グラスが空だから」と部下に指示を出すシーンがあり、グラスが空だと思った理由が、

見たからでもない。

タイミング的に、でもない。

 

グラスの氷が解けてカチンとなる音に気付いたからなのだ。

 

カレー屋に戻ると、確かに私は水を飲みほした。そして氷の「カラッ」という音がしたのだ。

そして間髪いれずにくるおっちゃん!

本当だ!氷の音でグラスが空かわかるっていうのは本当だったんだ!と一人内心興奮していた、完全に不審者である。

 

そしてあまりに興奮しすぎたせいか、帰り道を間違えなぜか逆方向に邁進してしまった。なにがドーミーインがあるから駅はあっちだ、逆だわ間抜けめ。

さらにその無駄な彷徨のせいで、駐車料金を多くとられてしまった、ちゃんちゃん。