世の中に、見ていて爽快な俺TUEEEEと不快なものがあるのなら、これは間違いなく前者。
作品自体は漫画の広告で知っていた。
ハンデだ。ここから一歩の動かない、からの心臓の鼓動でぶっ殺しの流れは数ある俺TUEEEEの中でもTUEEEEEE度が高く、そのかっとび具合からアニメ化に際し、どういうものなのかと期待値が高かった作品だ。
正直最初の数話は、これ見る人を選抜しにいってるなと思った。
まだアノスという人物が、どういった魔王なのか、何を規範に考えて行動しているのかがわからないうちに、家族愛を試す、というにはいささかハードすぎる内容だったが、というのは、下手をうつとそういったものにエクスタシーを感じるサイコパスともとらえられかねない。
もちろん話が進むにすれ、アノスが情を理解し、また他人の意思を無理やり捻じ曲げるようなことはせずむしろ尊重するキャラであるとわかるのだが。
さらにいうなら、5分でツンツン状態からキスしてくるヒロインも、なろう系にありがちな即落ちヒロインともとれる。正直ここは原作ではもう少し濃く描写されているシーンだとも思うがアニメの進行上仕方なかろう。
話はそれるが、その即落ちヒロイン候補のサーシャを演じる夏吉ゆうこという名前に、そこそこに声優に詳しいと自負のある私でも思い当たるところがなかった。のだが、名だたる声優陣と並んでも遜色のない名演だったとおもう。今後がとても楽しみである。
さてこの作品のストーリーというのはシンプルで、謎を作る→アノス様が考えて答えを出す→TUEEEEEEする 構造だ。悪役はひたすら悪役だし、仲間はみんな善人だ。
いってしまえば水戸黄門と構造は同じなのだ。
そしてその構造故、俺TUEEEEEが不快にならず爽快感を与えてくれる。
もう少し深堀りすれば、結局不快につながる俺TUEEEEEEEEEEEは
「特にするつもりはないが、なんか持ってる力でTUEEEEEEすることを目的にしている」
ものであって、敵役は驚き、味方はすごいわ、さすおに!!!してくれる。
当作品における俺TUEEEEEEEEEは
「目的のために、持っている力でねじ伏せた結果俺TUEEEEEEになった」
ものであり、この場合の俺TUEEEEEEEEEEEは手段でしかない。敵はあまりの強さに驚くが、味方はアノスなら当然だとしか思っていない。
俺TUEEEEEを目的にすると「こいつドヤりたいんだな」という主人公、さらには作者の意図が見えてしまい気持ちの悪さを感じてしまうわけだ。
ちなみにTUEEEEEEのEの数は適当だ、できれば突っ込まないでほしい。
話の内容に触れるなら、最終話付近で、人間も魔族も信じる魔王アノスと、人間すら信じられなくなったレイ(勇者カノン)という対極の二人が、それぞれ対極の状態になっているのが話のつくりとして面白い。
このわかりやすい二項対立が話をきれいにまとめる、盛り上げる。
このアニメでは全編を通じてそのわかりやすい二項対立があり、そして理が主人公にあるからこそ、主人公を応援できる。
作りとしてはシンプルに過ぎるかもしれないが、シンプルこそ全てという考えもあることだし、これはよいものだろう。私はそう信じたい。