新食魂島

王様は裸です、と叫びたい夜。

円の面積の指導を考えてみる

円周率とは何か?

あるものはいった。「3.14です」と。

またあるものはいった。「πです」と。

はたもや頭がおかし気なものはこういった。「3,1415926535.........」。私はそいつに黙れというだろう。お前の念仏などには興味ない。

 

さて解答を言えば、「円周に対する直径の割合」というのが正解である。

記号で表すと、円周l(エル)、円周率π、半径をrと置けば

 

π=l/2r

 

・・・パソコン媒体だとlの小文字が1やIに見えて何とも紛らわしいのだが、他の書き方をするのも何か気持ち悪いのでlで書くとしよう。

 

さて2003年の東大入試において、とある問題が出題された。

 

「πが3.05より大きいことを示せ」

 

この問題はドラゴン桜にも取り上げられ、当時学校においてあったそれを呼んだ私は、ぶっちゃけよくわかってなかった。

高校生の時分の自分(激うまギャグ)は数学というものをまともに勉強してなかった。お前よくそんなんで数学科行こうとしたな、という誹りは避けられないだろう。

そして今になって改めて解くと、東大の入試のメッセージ性にはほとほと驚かされると感じる。

今回はこの問題の考え方を軸に、小学校5年生への指導案を考えてみるとする。

 

まずは円上の点から点にひいた線をその点以外の点で交わらないように引いた線、隣り合う点と点を結んだ直線が作る多角形の直線の長さは、円周より短いことを確認しよう。

点と点同士を1直線につなぐのと、円のようにぐるりと大回りしているものの長さが違うことを確認すればよい。

また長さが同じ線分が、一点で交わってなす角が小さくなれば・・・説明しずらいのでお箸を例にとると、お箸の手に持つサイドの角度を広げると、箸先の間の長さが長くなることも確認する。

 

次に円に内接する正方形を考える。小学生には先に正方形を書かせてからその中心から円を描かせた方がスムーズだと思われる。

よく小学校の先生は定規や分度器を使わせたがるが、個人的にはまずはフリーハンドで正確な図形を描かせるようトレーニングさせるべきだと思う。

図形は正確に近い方がいいが、必ず正確でなければならないというわけではないのだ。

そもそもそんなちんたら書いている時間がもったいない。私からすればそれをさせるのは時間稼ぎそのものだ。

この問題では簡便のために円の半径を1とするが、それをリアルに再現すると小さくて書きにくく、また見にくいので無駄だ。

 

考えるべきはこの正方形の周の長さLと、円周の長さlの比較だ。円周の長さは2×(円周率)だが、周の長さは根号を用いなくてはならないので具体的には考えない。大体1.4くらいになるでいいだろう。

 

この問題の解決には、円上の点を頂点とする図形の長さを2で割ったものが3.05より長いことを示せばよい。

ここで円上の点を頂点とする図形について考えると、各点が変に散らかっていると数えるのは非常に面倒になることを抑えておこう。そうすれば規則正しく一定の間隔で点ををとる、正N角形を考えるのが一番自然になるからだ。

 

次に正6角形を考えてみよう。

お箸の例に戻るなら、正方形と比べて手元の角度を狭くして箸先を狭めているが、これはより円の弧に底辺の長さを近づけているということだ。つまりより正確に表すことができる。ざっくばらんにいうなら、ピザをピースを近くして外周の円の端っこと端っこを直線で結んでみると、切り取った外周の長さに近くなるということだ。

さて、この時となりあう2点と円の中心をつないだ直線は正三角形を作る。つまり先ほど正方形の時にはわからなかった隣り合う点との距離が1だとわかる。

正6角形の周の長さLは6となる。

6<2×(円周率) 、3<(円周率)が示される。

 

では、どうすればもっと正確に比較ができるかを考えさせよう。

結論は、正多角形の角を増やしていくことだ。どれだけ多角形になろうと、円周上の隣り合う点をつないで一周したものは円周より大きくなることはない。実際この問いは正12角形で正答を導き出すことができる。

しかしそれ以上に細かい多角形を考えれば限りなく円周に近い長さが得られる。しかし一致することは絶対にないのだ。

この限りなく近く限りなく遠い、という数学的な美が伝わってほしい。

 

さらにもう一押ししてみよう。この限りなく細かく、つまり多角形の角を多くとることは、円の面積を限りなく正確にトレースすることに等しいということだ。

おそらく、円の面積になぜ円周率が関わるかはうまく説明できない人が多数だと思うし、子供もあまり納得してないところだと思う。

まず面積に関する考え方を整理しよう。

 

小学生は2年生で掛け算を習う。掛け算は面積の計算でも使うので、密接な関係はみてとれるだろう。

りんご5個を3人に配るという問い。これは3×5(掛け算の順序に関しては今は議論しない、というかそれだけで2000字を越えかねないので)で15。

計算をすればただそれだけのことだ。しかし実際の思考は写真のようになっていて

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そしてこれは1×1のタイルをよこに3つ、たてに5つ並べるのと相違ない。しきつめるものがりんごかタイルかの違いでしかない。

長方形の面積がこれでいいが、三角形の面積はどうなんだ、と思われるかもしれないが、三角形の面積を求める際には、一度長方形にして考えるということを確認すればよい。1点から向かい合う辺に垂線をおろして一度直角三角形を2つ作ってから、長方形にするというプロセスがあるのでそれを確かめよう。

 

結局、三角形も1×1のタイルで面積を示すことができるので、円の中に書いた小さな三角形の面積が全て数えられる、すなわち円の面積に限りなく近く示すことができるのだ。

結局、円の面積も三角形や長方形と同じ尺度で考えることができる。

正6角形ならこんな感じだ。

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正8角形なら全体の面積は4AB×OC(ここでいうABとOCは正6角形の時と場所の関係が変わらないだけで長さは違う)だ。

さて三角形の面積を求める際、一度ある点から向かい合う辺に向かって垂線をおろしてできた二つの直角三角形と同じものを重ねて長方形を一度作るといった。

つまり同じ三角形があるのなら、それはそのようにしてできた長方形と同じ面積だ。(まわりくどい言い方だが、aを底辺、bを高さとするならば、三角形がS=ab÷2で長方形がabだから三角形の2倍の面積はその三角形がつくる長方形の面積と同じだよねということ)

結局、正6角形で得られた3AB×OCという式は、三角形を並べ替えて長方形を作ったとき、底辺3AB、高さOCの長方形の面積に他ならない。

結局正N角形で得られる三角形を並べ替えると、底辺N/2×AB、高さOCの長方形が得られるのだ。

 

とどめだ。

ABという長さを正6角形なら3倍、8角形なら4倍すれば、すなわちN/2倍すると、円周率のr倍、すなわちπr、円周で、それに近い数値が得られる。

そしてOCという長さは正多角形の角を増やすと限りなく半径の長さ、すなわちrに近づく。

そしてそうやってできた三角形を並べ替えると、正N角形で底辺N/2×AB、高さOCの長方形ができる・・・

 

ん?N/2×AB≒πrだから仮定した3角形のなす長方形の底辺がこれで、高さがr・・・

 

πr^2

 

 

勝ったな。